曇り空ながらじわじわと気温が上がってきた14時すぎ。yamaのサウンドチェックがスタートする。まだ本人が登場していないにも関わらず、そのサウンドに合わせてクラップをする観客たちからは、ステージを心待ちにしていることがこれでもかというほど伝わってくる。
14時30分になると、WATER STAGEにオープニングSEが鳴り響く。まずはバンドメンバーが登場し、観客をクラップで煽る。そんな中、トレードマークである白いパーカーに身を包んだyamaが登場。まずは昨年リリースされるやいなや大ヒットした「色彩」でライブをスタートさせる。歌詞を客席に投げかけるかのような歌で、会場中を一気にヒートアップさせていく。
「yamaです。今日はよろしくお願いします」と改めて挨拶をすると、yamaの1作目であり、YouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』でも披露された「春を告げる」を続けて披露。「おぉ!」という歓声が上がり、会場はクラップとともに揺れていった。このグルーヴィーな音につられるかのように、WATER STAGEには次々と人が集まってくる。
「『Lucky Fes』、楽しんでますか? めちゃくちゃ熱い! 去年に引き続きここに戻ってくることができて嬉しいです。そして来てくださってありがとうございます」とお礼を言うと、ここでMCタイムへ。「去年、良い出会いがあって。Def Techと出会って、今年対バン誘ってもらえたりとか。今年もまた来れて本当に嬉しい」と、アーティスト同士の交流があったことを報告する。さらに、今年のyamaのステージは撮影&SNS投稿OK。それを受けて、「せっかく目の前にいるから(スマホ)越しじゃなくて、なるべく目に焼き付けてくれたら嬉しいなって思ってます」と思いを伝えると、大きな拍手が。しかし、「どうしても撮りたかったら……撮っていいよ(笑)」とチャーミングに笑いを誘う場面もあった。
「でもちゃんと見てほしい。今日は楽しんでいきましょう!」と締めると、Vaundyのプロデュース曲「くびったけ」が飛び出す。ステージの端まで移動したり、しゃがんでみたり、お立ち台に上って歌ってみたり。全身で音楽を観客に届けていく。
ボルテージを上げまくった後は、「水分取ってくださいね」と気遣いのひと言。そして、「1回落ち着くためにバラードやりたいなと思います」と、ハスキーかつ透明感溢れる歌声がたっぷり味わえる「Oz.」をスタートさせた。……と思ったが、「ごめんなさい、もう1回やっていいですか? ほんっとごめんなさい!」と歌い出しで演奏をストップするというハプニングも。これもライブならではの醍醐味である。だが、そのハプニングもものともせず、再び美しく伸びやかな歌を響かせていく。気温は30℃に迫る勢いだったが、それでも涼しい風を感じたのは、どこかセンチメンタルな同曲が会場を包んだからなのだろう。
その余韻が漂う中、「最近思うことがあって」とyama。「糸みたいなものをピンと張って頑張ってる状況なんですけど、そういう時にたまに切れそうになる瞬間があって。どうやったら繋ぎ止められるかなって考えた時に思い出すのは、ステージに立ってその場を共有している時の景色とか高揚感。変わらず自分は自分のためにずっと歌い続けるんですけど、それが結果的に、間接的に、誰かを肯定できているならいいなって思って曲を作ったり、歌ったりしています」と思いを伝える。
さらに「なりたい自分にはなれてないですけど、ちょっとずつ進んで頑張ろうって書いた曲です」と語り、自身が作詞作曲を手掛けた「ストロボ」へ。同曲について、以前ラジオの中で「『この曲をライブでやりたい!』と思える曲がちゃんとできた(※)」と語っていたことがあった。その言葉の通り、生で見るからこそ感情伝わってくるダイナミックなパフォーマンスを披露していく。
「次で最後の曲です。最後の最後まで楽しんでいきましょう」という言葉とともに放ったのは「slash」。重厚なロックサウンドにyamaの感情のこもった歌声が乗ることで、心がギュッと掴まれるかのようなパワーを会場中に届けていく。そして曲が終わると「ありがとうございました」と深く頭を下げ、ステージを後にした。
数々のヒット曲を生み出し、その名を轟かせているyama。にも関わらず、未だミステリアスなイメージがあるのは魅力の一つだろう。そのある種の崇高さとともに、yamaが持つ熱さも感じられたこのステージは、多くの人の心に残ったはずだ。
セットリスト
1.色彩
2.春を告げる
3.くびったけ
4.Oz.
5.ストロボ
6.slash
(※)https://audee.jp/news/show/105851
テキスト:高橋梓
写真:清水ケンシロウ/team SOUND SHOOTER