日が沈みすっかり涼しくなった19時40分頃、サウンドチェックのために赤いドレスを身にまとった大黒摩季がステージに登場する。彼女がサウンドチェックに選んだ曲は、Bette Midler「The Rose」。「サウンドチェックとは?」と思ってしまうほどの歌唱を見せ、本番前からWATER STAGEパンパンに集まった観客を魅了する。そして、「みんな、水分取ってね。本番始まったらバラードのヒット曲ないから、ほとんどアゲアゲなの」と期待が高まる言葉を送った。さらに「私、花火の前座だから。盛り上げるから、いつでも(音を)勝手に出してちょうだい」と言い、「夏が来る」を1コーラス目まで歌ってサウンドをチェックすると、「続きは本番で! 楽しんでください」と颯爽とステージを去っていった。何から何までカッコイイ。

それから約5分後。ついにライブの幕が上がる。「いくよー!」と再び登場した大黒は、カラフルなショートパンツとベストのセットアップに衣装チェンジ。「Are you ready!」と観客に喝を入れるかのように始まったのは、「あなただけ見つめてる」。歌詞に沿いながら、「〈ポケベル〉、あったねぇ〜」と笑顔を見せたり、〈サッカーさえも好きになったわ〉でSAXのヒロムーチョとボールを蹴るジェスチャーをしたり、〈愛のHigh Tension〉で手でハートを作ってみたり。サビではまず会場の右半分に歌わせた後、「全員!」とその場にいた全ての人に声を出させる。最後の〈行けっっ!!夢見る 夢無し女!!〉のハイトーンも決まり、大きな歓声が上がった。

続いてミリオンセラーを記録している大ヒット曲「DA・KA・RA」へ。WATER STAGEは立つところも座るところも無いほど超満員になっていたが、そこにいた全員が体を揺らし、クラップしている風景は圧巻だ。そのまま繋げて「チョット」が飛び出すと、さらに会場は熱気を帯びていく。サビの〈チョット待ってよ〉の大合唱がキマると、大黒もステージを楽しんでいるように晴れ晴れした表情を見せていた。

まだまだスタートダッシュは止まらない。ここでサウンドチェックの時に「続きは本番で」と予告されていた「夏が来る」が続く。「今年の夏も、幸せになるよ!」と笑顔を見せて歌い出すと、会場中の手が一斉に上がる。ラテン調のサウンドが広がっていき、会場はこれでもかというほど夏ムード一色に染まっていった。

一旦クールダウンでMCタイムへ。客席から「遊太~!」という歓声が聞こえると、「本日はQUORUMのライブへようこそ。バックコーラスの大黒摩季です」と笑ってみせる大黒。QUORUMとはバンドメンバーの北川遊太(Gt)と盆子原幸人(Ba)が所属するロックバンドなのだが、「この2人、バンド組んでるんですよ。とってもカッコイイの。そこからスカウトしてきちゃった。男の子、綺麗でかわいい方が良いでしょ?」とチャーミングに言ってみせる。

「(ステージは)短いけど、こっからオラオラになるから。皆さん準備はいいですか?」と煽り、「怒りを吐き出せ!」というシャウトとともに飛び出したのは「熱くなれ」。とにかく、“カッコイイ”しか言葉が出てこない。パワフルでソウルフルな歌声はもちろん、ラップも、楽器隊のソロ終わりでハイタッチをキメるのも、衣装をパッと払う仕草も、全てが最高にクールなのだ。

さらに、観客のクラップとともに「いちばん近くにいてね」がスタート。ラテン調のサウンドに合わせて、大黒の力強く突き抜ける歌声が広がっていく。〈La La La〉の大合唱も決まったところでマイクスタンドが登場。迫力とエモーションが詰まりまくっている「Anything Goes!」でボルテージは天井知らずに上がっていく。

するとここで、「日本中で今、水害がすごいことになっています」と語り始める大黒。「よくボランティアとかやってたからわかるんですけど、待ってる時間って心細くて死にそうです。でも災害大国の日本ですから。どんどん(復興が)スピードアップして世界で一番早いんだそうです。この『Lucky Fes』からラッキーとともに(被災地に向けて)『ら・ら・ら』の大合唱してもらえませんか!」と呼びかけた。そして、総合プロデューサー・堀義人、オズワルド、t-Aceがステージに登場。大きなクラップとともに、会場全員で歌う「ら・ら・ら」がスタートした。日が沈んだWATER STAGEには、希望溢れる同曲が広がっていく。もちろんサビは大合唱。大黒も観客も手を揺らしながら、一緒に声を合わせる。その景色は絶景と呼ぶにふさわしかったはずだ。

スタートからテンションを上げまくり、心を揺さぶった後に、目をうるませられる。感動しないわけがない。希望の光がひたちなかの空に輝いていたような、そんな熱くも温かいライブであった。

セットリスト
1.あなただけ見つめてる
2.DA・KA・RA
3.チョット
4.夏が来る
5.熱くなれ
6.いちばん近くにいてね
7.Anything Goes!
8.ら・ら・ら

テキスト:高橋梓
写真:清水ケンシロウ/team SOUND SHOOTER